TOP >> 日本の芸術郷

日本の芸術郷


箱根 神仙郷

岡田茂吉が理想社会のモデル=芸術郷として最初に手掛け、一木一草一石にまで配慮し完成させました。およそ3800坪の敷地に建物、庭、水の動きを巧みに配置しています。平成25年(2013年)国の登録記念物に認定。

<建築>
敷地北東に位置する「神山荘」は実業家・藤山雷太の別荘(昭和10年頃完成)だった建物で、家全体が岩の上に建ち、日本間と洋間が両翼に分かれている特徴的なプラン。平成13年(2001年)に国の登録有形文化財に登録されました。ほかにも山荘風の移築建築「萩の家」、岡田茂吉設計の母屋に吉田五十八による増築部を加えた「観山亭」、吉田五十八設計の「日光殿」、三代目木村清兵衛が設計した「山月庵」など、昭和20年代に完成した趣向の異なるさまざまな建築が、いまも美しく管理されています。そのひとつ箱根美術館は岡田茂吉自らが設計。外観は東洋風、内装は西洋風、最上階には日本間と、ひとつの建築に世界の型を映し込んでおり、自然光で日本・東洋美術の優品が楽しめます。
<庭>
静謐な苔庭は楓との調和が季節ごとに美しく、9月には萩の道が花のトンネルに、竹庭はまるで絵画を見るような清新さです。起伏ある地形を巧みに利用したゾーニングで一つの庭からはほかの庭は見えず、歩き進むと滝や水のせせらぎが聞こえてくるなど、場所ごとの美しさに身を置く悦びがあります。
箱根 神仙郷(箱根美術館)
www.moaart.or.jp/hakone
〒250-0408 神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300



熱海 瑞雲郷

洋々たる相模灘のパノラマが心身を清々しく開放し、穏やかな心地に誘う瑞雲郷。急峻な土地を開き(敷地面積約75,000坪)、箱根・神仙郷とほぼ同時期に造営が進められました。MOA美術館では国宝3点、重要文化財66点を含む約3500点の岡田茂吉コレクションを順次展示しています。

<建築>
この場所の魅力を象徴する水晶殿は、海を臨む180度の曲面窓が無柱構造になっており、窓からは大海原と盆石のような伊豆大島や初島、伊豆半島、さらに澄んだ日には房総半島までも見渡せます。遠望にきらめく海景、近景に松を見るパノラマは、季節や時間で刻々と表情を変化させ、自然が描く絵巻物を眺めているようです。 昭和57年(1982年)に開館したMOA美術館は、 最大高低差7.7mの入り口の滝、円形ホール、ムア広場(ヘンリー・ムア作のブロンズ像を展示)など多様な空間が連続し、展示スペースへと導きます。館内には能楽堂を有し、隣接する茶苑には「光琳屋敷」の復元、茶席「樵亭」「片桐門」を移築。「光琳屋敷」は尾形光琳が自ら描いた図面、大工の仕様帖、茶室起し図(いずれも重要文化財)などに基づき、数寄屋建築研究の権威・堀口捨巳博士の監修によって復元されました。2017年にはロビーエリアと展示スペースを改修し、現代美術作家・杉本博司と建築家・榊田倫之が主宰する新素材研究所が手掛けています。
<庭>
早春にふくいくたる香りをはなつ紅白梅と芝を合わせた梅園。開花時期には芝が黄金に紅葉し、あたかも尾形光琳作「紅白梅図屏風」のなかを散策するかのような風情に。春霞のころなら海景に淡い雲を添える桜山。そして春には絨毯のように山腹を色鮮やかに包むツツジが見頃になります。約3000株のツツジはどこから見ても丸く見えるように整えられ、水晶殿の足元に彩りを与えます。
熱海 瑞雲郷(MOA美術館)
www.moaart.or.jp
[救世会館]〒413-8585 静岡県熱海市桃山町26-1



京都 平安郷

平安時代の面影をいまも残す嵯峨野、広沢池のほとりにあり、小川と山野草のたおやかな風景が広がります。平安郷は敷地約3万坪。建築や庭の様式はこれまでの時代時代にできた日本趣味をできるだけ取り入れ、日本の総合美というものを造りたいとの構想に基づいて造営されています。平成17年(2005年)に第一期庭園が竣工。以来少しずつ建設が続けられています。

<建築>
土を一層ずつ突き固めた土塀で築かれた「中門」は里山の旧家を思わせ、“土の聖地 平安郷”の心を醸し出しています。築150年~200年の古民家の柱、梁を使用した茅葺屋根の「楠風荘」(休憩所)、数寄屋造りの名工が改修した「中の茶屋」(池畔亭)など、風土のなかで育まれてきた日本の建築様式を残すと共に、手を入れるにあたっては伝統技術の伝承も意図しています。また元中国華北交通(満州鉄道)総裁・宇佐美寛爾の別荘(設計:黒岩賢次)だった「春秋庵」は、屋久杉や伊勢神宮の杉を使い宮大工の技を込めて造られた価値の高い建築。これを後世に伝えるため大改修を施し、さらに茶室を増築。平成24年(2012年)に茶室開きを行い、入手60年目にして春秋庵は名実ともに完成を迎えました
<庭>
やわらかな山影を水面に映した広沢池、垣根ひとつなく広がっていく、のびやかでおおらかな美しい野の風景こそ、平安郷の趣きです。嵯峨野は京都の中でも歴史が古く、古より天皇、大宮人などに愛され、歌にも詠まれた平安王朝文化の精髄が息づく場所。そのまほろばに桜の大樹が咲き誇る美しさは、悠久の時を思わせます。春には枝垂れ桜、秋には紅葉を愛でながらの野点などを催しています。
京都 平安郷
〒616-8307 京都市右京区嵯峨広沢池下町24-1
(4月、5月、11月に数日間一般公開)